冬まき(=秋に播いて冬〜早春にかけて収穫・越冬する作型)で特に「栄養価が高い/機能性が期待できる」野菜を厳選して詳しくまとめました。地域差(寒冷地・中間地・暖地)ごとの播種時期、栽培ポイント、栄養・機能性の要点、越冬対策(寒締め・トンネル等)まで入れています。重要な根拠は本文中に出典を付けています。まずは一覧→個別詳細→最後に栽培の実践的コツ、という順でどうぞ。
要点サマリ(先に結論)
- 葉物:ホウレンソウ(寒締め栽培)・ケール・コマツナ(小松菜)・スイスチャード・春菊・ルッコラ — ビタミン類・抗酸化物質やミネラルが豊富で、寒さに当てると糖度や一部栄養が高まるものが多い。(農林水産省)
- 根菜・色素野菜:ビーツ(赤ビーツ) — 葉酸・ベタレイン(抗酸化)・硝酸塩など、機能性成分が豊富。秋播きで冬収穫が可能。(城西大学)
- 球根類(秋植え):ニンニク・タマネギ(秋植え) — 抗菌性成分や保存性に優れ、秋に植えて翌年初夏に収穫。(ja-saitama.or.jp)
以下、作目ごとに「なぜ高機能か」「冬まきの適期(寒冷地/中間地/暖地)」「栽培要点(発芽温度・株間・覆土など)」「越冬・収穫のコツ」を順に解説します。出典は各項目末に示します。
個別解説(おすすめ順・詳細)
1) ホウレンソウ(寒締めホウレンソウ)
なぜ高機能?
寒締め(収穫直前に低温にさらす)によって糖度・ビタミン含量が上がり、食味と機能性(ビタミンC・カロテン・葉酸など)が向上することが研究で示されています。硝酸含量の低下も報告されており、安全性の面でも有利です。(農林水産省)
播種(目安)
- 寒冷地:8〜9月上旬播き(早め)
- 中間地(関東等):9月上旬〜11月上旬(寒締め用は10月中旬〜11月)
- 暖地:10月〜12月も可能(品種による)。
※品種で適期が変わるので種袋の適地表示を確認。サカタ等の推奨品種情報も参考に。(タネ(種)・苗・園芸用品は〖サカタのタネ〗)
栽培ポイント
- 発芽適温:15–20℃程度。覆土は1cm前後。
- 間引きで最終株間5–6cm程度に。
- 寒締めを狙う場合は、出荷サイズまで育ててからハウスの側窓を開けるなどして冷気に数日〜数週間さらす(地域・品種で管理法が異なる)。(農林水産省)
越冬・収穫のコツ
- 露地での越冬は品種と地域次第。寒締めは糖度向上に有効だが、凍結させない管理が必要。(農林水産省)
2) ケール(Kale) — 冬越しで「甘くなる」代表格
なぜ高機能?
β-カロテン、ビタミンC、カルシウム等が豊富。冬越し(寒さ)に当てると植物が糖を蓄え、甘味・風味が格段に良くなる(地域ブランド化の事例あり)。(食品成分データベース)
播種(目安)
- 中間地:春まき3–4月/夏末〜初秋(8–9月)に播いて秋〜冬に収穫する「秋まき」作型が冬収穫に向く。真冬に収穫を狙うなら秋まきで株をしっかり育てる。(GreenSnapSTORE)
栽培ポイント
- 発芽適温:18–22℃。生育適温15–25℃。
- 本葉がそろってから定植、株間40cm前後。酸性土壌を嫌う(pH6.0前後が目安)。
- 冬に糖度が上がるので防寒はするが「寒さを当てる」管理(凍結注意)が風味アップの鍵。(GreenSnapSTORE)
3) コマツナ(小松菜)
なぜ高機能?
β-カロテン、ビタミンC、カルシウム、鉄などを多く含み、冬にじっくり育てると栄養価が高まることが知られる(日本での伝統的な冬野菜)。(JAグループ)
播種(目安)
- 中間地:秋は9月〜11月が目安(品種で幅あり)。冬越し可能な品種は無被覆で育つこともある。(JAグループ)
栽培ポイント
- 発芽適温:約15–25℃。覆土は薄く(1cm前後)。
- 収穫が長く続くため、間引きを繰り返しながらベビーリーフ〜株ごとの収穫まで調整する。(JAグループ)
4) スイスチャード(不断草/フダンソウ)
なぜ高機能?
色軸のある品種はアントシアニンなどの色素や各種ビタミンを含み、葉物の中でも耐寒性と栄養バランスが良い。年をまたいで連続収穫しやすいのも利点。(LOVEGREEN(ラブグリーン))
播種(目安)
- 春〜秋まきが一般的だが、耐寒性があり早秋に播けば冬〜早春も収穫可。(マイナビ農業-就農、農業ニュースなどが集まる農業情報総合サイト)
栽培ポイント
- 発芽温度はやや高め(およそ20℃前後で発芽しやすい)、生育適温は15–20℃。越冬するとトウ立ちしやすいため、越冬後の扱い注意。(マイナビ農業-就農、農業ニュースなどが集まる農業情報総合サイト)
5) ビーツ(赤ビーツ/テーブルビート)
なぜ高機能?
葉酸・鉄・カリウム、ベタレイン(赤色の抗酸化色素)や硝酸塩などが豊富で、機能性食品として注目されています。(城西大学)
播種(目安)
- 中間地:春(3–5月)と秋(8〜10月)に播くことが一般的。秋まきで冬〜早春に収穫(保存して長期間利用)できます。(OATアグリオ栽培メディア)
栽培ポイント
- 発芽適温:15–20℃。深植えせず1cm程度の覆土で直まきが基本。株間は15–20cm。根が肥大するので深めの耕土を用意。(OATアグリオ栽培メディア)
6) 春菊(シュンギク)
なぜ高機能?
香り成分やビタミン類があり、冷涼期に味が良くなる。比較的寒さに強く秋まき〜冬どりが適する。(株式会社ハイポネックスジャパン|ガーデニング・園芸・肥料・薬品の総合情報サイト)
播種(目安)
- 秋播き(9〜10月)で冬に収穫。寒さに当てると味が締まる。(株式会社ハイポネックスジャパン|ガーデニング・園芸・肥料・薬品の総合情報サイト)
7) ルッコラ(ロケット)
なぜ高機能?
独特の香り(イソチオシアネート類)は機能性成分に由来し、ビタミン・ミネラルもそれなりに含む。短期間で収穫できるのでローテーションに入れやすい。(株式会社ハイポネックスジャパン|ガーデニング・園芸・肥料・薬品の総合情報サイト)
播種(目安)
- 秋:9〜10月が播種適期。冬の低温下は生育は緩慢になるが、防寒すれば収穫可。(Garden Story)
8) ブロッコリー・ハクサイ(結球性アブラナ類) — 冬採り作型
なぜ高機能?
ブロッコリーはスルフォラファン等の抗酸化・抗がん作用が注目される成分を含む。白菜もビタミン類・食物繊維が豊富で冬季の保存食として機能的。秋に苗作り→定植して冬どりするのが主流。(サカタのタネ 家庭菜園・園芸情報サイト 園芸通信)
播種/定植(目安)
- ブロッコリー:夏まき→秋〜冬どり(地域・品種で7–9月播種→11月〜翌春収穫)。冬まきは加温育苗やトンネルが必要。(minorasu(ミノラス) – 農業経営の課題を解決するメディア)
- ハクサイ:秋まき(8月下旬〜9月頃)で冬収穫の作型が代表的。(株式会社ハイポネックスジャパン|ガーデニング・園芸・肥料・薬品の総合情報サイト)
9) ニンニク・タマネギ(秋植え)
なぜ高機能?
ニンニクのアリル化合物、玉ねぎの硫化アリル類などは抗菌・抗酸化作用で健康効果が期待されます。どちらも「秋に植えて越冬→翌年収穫」する典型的な秋植え作目。(ja-saitama.or.jp)
植え付け(目安)
- ニンニク:地域差あるが概ね9〜10月に植え付け(寒さが来る前に根を張らせる)。(サカタのタネ 家庭菜園・園芸情報サイト 園芸通信)
- 玉ねぎ(苗植え):10月下旬〜11月上旬(早生〜中間地基準)など、品種に合わせる。(OATアグリオ栽培メディア)
冬まき・冬越しで成果を出す「実践10か条」
- 地域(寒冷地/中間地/暖地)で播種適期を必ず確認(種袋・種苗メーカー/JAのカレンダーを参照)。(タネ(種)・苗・園芸用品は〖サカタのタネ〗)
- 土づくり(pH調整):ほうれん草・スイスチャード等は酸性に弱い。播種の1〜2週間前に苦土石灰を施す。(サカタのタネ 家庭菜園・園芸情報サイト 園芸通信)
- 覆土・発芽管理:発芽温度を考えて覆土は薄め(1cm前後)に。発芽後の保湿を優先。(タネ(種)・苗・園芸用品は〖サカタのタネ〗)
- 寒締め(ホウレンソウ等)を利用:栄養と甘味を上げたい場合、収穫前に低温刺激を与える技術が有効。ハウス側窓開放など管理が必要。(農林水産省)
- 不織布・トンネルでの保温:発芽遅延や霜害防止には軽いトンネル・不織布が便利。光は確保する。
- マルチ・排水対策:過湿による立枯れやべと病を防ぐ(排水良好に)。(サカタのタネ 家庭菜園・園芸情報サイト 園芸通信)
- 害虫の季節変動を利用:冬は害虫が少ないが、早秋に播く期間は青虫類に注意。防虫ネットが有効。(GreenSnapSTORE)
- 追肥は生育に合わせて少しずつ(窒素を与えすぎると硝酸塩蓄積のリスク;寒締め栽培では窒素管理が重要)。(農林水産省)
- 品種選定が最重要:冬どり・寒締めに向く品種を選ぶ(種苗メーカー推奨の品種説明を確認)。(タネ(種)・苗・園芸用品は〖サカタのタネ〗)
- 収穫後の保存:根菜類は低温・暗所で長期保存可。葉物は収穫後速やかに冷蔵または加工(茹でて冷凍)で栄養を保持。
参考(本回答で参照した主な出典)
- NARO:「冬(寒締め)ホウレンソウの栽培と栄養向上」など。(農林水産省)
- サカタのタネ:ホウレンソウ・タマネギ等の栽培ガイド。(タネ(種)・苗・園芸用品は〖サカタのタネ〗)
- MEXT 食品成分データベース(ケールの成分表)。(食品成分データベース)
- 各種栽培情報サイト(GreenSnap、マイナビ農業、OATアグリオ等) — ビーツやスイスチャード等の栽培暦・ポイント参照。(GreenSnapSTORE)
- JA/地方農協情報(小松菜・ニンニク等)。(JAグループ)

