湊くんとスイスチャードの天ぷらと便秘解消

6歳になる湊くんは、小さなころからずっと便秘に悩まされてきました。生まれたときからお腹が弱く、どんなに食べても、どんなに水を飲んでも、なかなか出てこないのです。お母さんは毎日、食事の工夫をしたり、ヨーグルトを食べさせたり、お医者さんにも何度も相談しました。お医者さんから出されたお薬を飲めば、なんとか1週間に1回は出るのですが、そのたびに激しい痛みと戦わなければなりませんでした。トイレの中で顔を真っ赤にして泣きながら頑張る湊くんの姿を見て、お母さんも胸が締めつけられる思いをしていました。排便のあとには、いつも少し血がついてしまい、見るたびにお母さんは「ごめんね、湊」と言って抱きしめました。

そんなある日、湊くんのおばあさんが遊びに来ました。おばあさんは野菜作りがとても上手で、美彩堂という名前の水耕栽培のハウスで、いろいろな色鮮やかな野菜を育てていました。おばあさんはその中でも、ひときわ元気に育っていたスイスチャードを摘み取りました。赤や黄色、ピンクの茎が美しく光っていて、「まるで虹みたいね」とおばあさんは微笑みました。

「今日は湊に、元気の出る天ぷらを作ってあげようね。」

おばあさんは、湊くんのためにスイスチャードの天ぷらを作ることにしました。薄い衣をつけて、サクッと揚げると、スイスチャードの香りがふわっと台所いっぱいに広がりました。湊くんは「なんかキラキラしてるね」と言いながら、おばあさんの手からアツアツの天ぷらを受け取りました。

ひと口かじると、外はカリッと、中はふんわり。ほんのりとした甘みと、少しの苦みが口の中に広がります。「おいしい!」と湊くんは笑顔で言いました。その日は、夕飯にもスイスチャードの天ぷらがたくさん並び、湊くんは夢中で食べていました。おばあさんもお母さんも、その笑顔を見て安心しました。

そして次の日の朝。まだ眠たそうにしていた湊くんが、突然トイレのほうへ駆けていきました。しばらくして、トイレの中から大きな声が響きました。

「おばあちゃん!見て!うんちが出たよー!」

その声は、これまで聞いたことのないくらい明るく、嬉しそうでした。お母さんとおばあさんが驚いて駆けつけると、そこにはスッキリした表情の湊くんが立っていました。顔は笑顔でいっぱいです。痛みもなく、出血もなく、すんなりと出たのです。まるでお腹の中のつっかえが一気に消えたようでした。

おばあさんは涙を浮かべながら、「よかったねぇ、湊」と抱きしめました。お母さんも笑いながら涙をぬぐい、「スイスチャードの力かもしれないね」と言いました。

それからというもの、湊くんはスイスチャードが大好きになりました。おばあさんの家に行くたびに「スイスチャードの天ぷら作って!」とお願いし、嬉しそうに手伝うようになりました。おばあさんの水耕栽培のハウスで、湊くんは小さな手でスイスチャードの葉を摘み取りながら、「この葉っぱが僕のお腹を元気にしてくれるんだよね」と笑いました。

湊くんの便秘はそれ以来、ほとんどなくなりました。薬も必要なくなり、毎日元気に学校へ行けるようになりました。お母さんは言います。「おばあちゃんの愛情と、美彩堂のスイスチャードが、湊を変えてくれたんです」と。

こうして、ひとりの小さな男の子と、一枚のスイスチャードの葉が結んだ、小さな奇跡の物語が生まれました。

〔この物語は実話を基にして創作されています。〕