**レッドオラッシュ(Red Orach / Atriplex hortensis var. rubra)**について、できるだけ詳しく・実務的にまとめます。
概要
レッドオラッシュは学名 Atriplex hortensis の赤葉系変種(しばしば var. rubra とされる)で、英語では red orach, red orache, mountain/french spinach 等と呼ばれます。葉は赤〜赤紫色で、サラダの彩りや葉物として利用されます。(ウィキペディア)
外観・生育の特徴
- 葉はやや厚めで光沢があり、色は品種によって薄いピンク〜濃い紫赤まで幅があります。葉が大きく育つ品種は丈が高くなる(品種によっては成熟でかなり立ち上がる)。(Annies Heirloom Seeds)
- 生育速度は速く、ベビーリーフ用途からフルサイズまで用途が広いです(料理では生食・加熱どちらも可)。(strictlymedicinalseeds.com)
色素・機能性(健康成分) — 重要ポイント
- レッドオラッシュの赤色は betalain(=ベタレイン:ベタシアニン等の赤色系色素) を多く含むことが報告されています。近年の研究では A. hortensis var. rubra 由来のベタレイン類が抗酸化や心血管保護効果を示す可能性が示唆されています。(ACS Publications)
- 一部の研究では、オラッシュに含まれる色素にアマランシン様の成分や、(通常は互いに排他的な)ベタレインとアントシアニンの検出が示唆される報告もあり、色素成分の解析は活発に行われています(学術的にはまだ研究継続中)。(BYU ScholarsArchive)
栽培ポイント(耐寒性・播種〜収穫)
- 耐寒性:かなり耐寒性があり、涼しい季節に良く育ちます。霜の直前まで収穫可能で、寒さにより色が冴えることが多いです。(Better Homes & Gardens)
- 播種・発芽:土耕では春の霜後〜夏手前まで直まき可能。発芽に適した温度は約10〜18℃(概ね発芽7〜14日)。薄く覆土(6 mm 程度)が一般的です。(Gardening Know How)
- 間引き・収穫:ベビーリーフは密播して4–6cmで摘み取り、フルサイズは間引いて30cm前後で育てるパターンが多いです。高温で早めに花(ボルト)が上がるので、長期間収穫するには温度管理・摘心が有効です。(gardening.cornell.edu)
水耕(室内・LED)での扱い方のヒント
- 市販の種子説明や専門店では「室内栽培やLED栽培でも育てやすい」「ベビーリーフに向く」との表記があり、水耕(深層水耕・NFT・養液栽培のベビーリーフ)でも十分に可能です。(eco-guerrilla.jp)
- 実務的なコツ:播種はやや密め(ベビーリーフ用途)にして短期で収穫、光は強すぎると葉色が変わる場合があるのでLEDの光量とスペクトルを調整(涼しい環境=色が出やすい)。摘心でボルティングを遅らせられます。(eco-guerrilla.jp)
料理・利用法
- 生で彩りのあるサラダ、葉で包む料理(ラップ代わり)、軽くソテーしてホウレンソウ代わりに使う、種子は焼き菓子に使う例もあります。伝統的に染料や民間薬としての利用記録もあります。(ウィキペディア)
品種名・入手(参考)
- 市販されている名称例:’Ruby Red’ / ‘Ruby Gold’ / ‘Red Plume’ / ‘Aurora’ 等。日本でも「レッドオラッシュ」表記で固定種や有機種子が流通しています(種苗店・通販で入手可)。(Annies Heirloom Seeds)
注意点(食べる上で)
- オラッシュには**シュウ酸(オキサレート)**が含まれる場合があり、ほうれん草ほどではないとする報告もありますが、腎臓系の病歴や尿路結石リスクのある方は摂取量に注意してください。加熱や湯通しで可溶性シュウ酸はある程度減らせます。(Botanical-online)
実用的なおすすめ
- 見た目(赤色)がとても映えるので、ベビーリーフミックスの差別化素材として強くおすすめ。
- 水耕で通年出荷を狙うなら、冬は室温を安定させ(10–18℃の涼しめで色が良く出る)、LEDスペクトルと摘心でボルティング抑制を行うと良いです。(eco-guerrilla.jp)
栄養価と機能性 — 詳細解説(レッドオラッシュ / Atriplex hortensis)
以下は、文献や研究報告に基づいたできるだけ根拠あるまとめです。主要なポイントごとに出典を付けています。
1) 赤い色素(ポリフェノール類)と抗酸化性
- レッドオラッシュの葉の赤紫色は**色素(フラボノイド系のアントシアニン、あるいは一部の報告ではベタシアニン類)**によるもので、これらが強い抗酸化活性に寄与します。葉色の強い品種ほど総フェノールや抗酸化能が高いという報告があります。(notulaebotanicae.ro)
- 研究室レベル(in vitro)では、オーチ(orach)抽出物はラジカル消去能や総抗酸化能が確認されており、他の葉物と比較しても抗酸化活性が高いとされることが多いです(ただし評価法や条件によって差があります)。(chemtech.ktu.lt)
2) ビタミン類・カロテノイド
- ビタミンCやビタミンK、β-カロテンなどの含有が報告されています。特にビタミンCは生で食べたときに多く摂れる栄養素で、抗酸化や免疫サポートに寄与します。(ResearchGate)
- 緑葉野菜に共通するカロテノイド(前駆体としてのビタミンA源)も含むため、視力や皮膚・粘膜の健康維持に資する成分が期待できます。(ResearchGate)
3) ミネラル(カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄など)
- 地域や品種によりますが、A. hortensis はカルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄、亜鉛などを比較的多く含むという分析報告があります。特に塩分ストレスに強い(塩を取り込む)性質があり、栽培環境(塩分濃度など)によって葉のミネラル組成が大きく変わります。(ResearchGate)
- そのため、塩土や高ナトリウム環境で育てると葉中のナトリウム(塩分)が上がる可能性がある点は注意が必要です(塩分管理が必要な方は留意してください)。(ResearchGate)
4) タンパク質・その他(種子・葉の利用可能性)
- オーチの種子・葉はタンパク質を含み、種子は比較的高タンパクで利用価値が示唆されています。葉のタンパク含量も葉物として実用的で、葉タンパク源としての研究が行われています。(PMC)
5) 機能性(抗酸化・抗炎症・伝統的利用)
- 抗酸化能に基づく酸化ストレス軽減の可能性や、抽出物レベルでの抗炎症作用が示唆される研究が複数あります。ただし、これらは多くが試験管内(in vitro)や動物実験・抽出物実験の段階であり、人を対象にした大規模な臨床試験で「確立された治療効果」として証明されているわけではありません。臨床的な効能を期待する際は慎重な解釈が必要です。(PMC)
- 伝統的には利尿や緩下(下剤的)作用などの民間利用も報告されています(民間療法や民族誌的な記録)。これも使用する際は用量や個人差に注意してください。(pfaf.org)
6) 成分や機能性は「環境や成長段階」で変動する
- 葉の抗酸化成分(アントシアニン等)やミネラル組成は、品種(赤/緑系)・土壌の塩分・光条件・生育ステージなどで大きく変わります。たとえば塩ストレス下でアントシアニンや抗酸化酵素が増えるという報告があります。したがって「栽培方法(例:水耕・土耕、光のスペクトル、塩分管理)」で栄養価をある程度コントロールできます。(notulaebotanicae.ro)
7) 食べ方による栄養摂取のコツ(実務的アドバイス)
- 生で(ベビーリーフ):ビタミンCやアントシアニンなど熱に弱い成分を効率よく摂れます。サラダやスムージーに向きます。(PMC)
- 加熱(ソテー等):葉が柔らかくなり食べやすくなる一方、ビタミンCは減りやすいですが、カロテノイド類の吸収性は加熱で上がることがあります。加熱時間を短く・油少量で調理すると栄養損失を減らせます。(PMC)
- 栽培管理:塩分を多く含む土壌で育てると葉中ナトリウムが高くなるため、減塩が必要な方は非塩ストレス条件で栽培するか注意して流通品を選ぶこと。(ResearchGate)
8) 研究の現状と注意点(エビデンスの強さ)
- 多くの知見は植物の化学分析やin vitro(試験管内)実験、動物モデル、抽出物試験で得られたもので、ヒトでの臨床効果を証明するにはさらに研究が必要です。機能性をうたう場合は「可能性が示唆されている」という表現に留めるのが適切です。(PMC)
用語解説【初心者向け】
- アントシアニン:赤・紫の色素。抗酸化作用があり、目の疲れや肌の老化予防に役立つとされる成分(研究段階)。(notulaebotanicae.ro)
- ベタシアニン(ベタニンなど):別の赤色系色素。植物の分類や種によってはアントシアニンとは別の色素が優位になることがある。(サイエンスダイレクト)
- 抗酸化能(ORACなど):酸化ストレスを抑える力の指標。ただし試験法で値が変わるため、単純比較には注意。(chemtech.ktu.lt)
- ハロフィット/塩生植物:塩分の多い土壌でも育てられる植物。Atriplexはこの性質があり、土壌や水の塩分が葉のミネラルに影響する。(ResearchGate)
参考にした主な文献・資料(抜粋)
- 塩ストレスとA. hortensisの抗酸化・色素変動に関する研究(Kachoutら、2013)。(notulaebotanicae.ro)
- “Exploiting the potential of red orache (Atriplex hortensis …)”(2024) — 赤葉系の色素(ベタシアニン等)や抗酸化性に関する最新の議論。(サイエンスダイレクト)
- Trans-Himalayan地域などでのミネラル含量推定・栄養ポテンシャルの解析(Research on Crops / ResearchGate)。(ResearchGate)
- Atriplex hortensisのゲノム・栄養ポテンシャルに関する概説(Genome assembly 等)。(PMC)
- 抽出物の抗炎症・機能性に関する最近のレビュー/研究(PMC 等)。(PMC)
申し訳ありませんが、論文を調べた範囲では、レッドオラッシュ(Atriplex hortensis の葉)に関して、「広く信頼できる“mg/100g”レベルでの成分含有量表」を網羅的に見つけることはできませんでした。ただし、いくつかの論文や研究から、特定条件下で測定されたビタミン・色素・ミネラル等の値を抽出できたものがあります。以下に、それらを整理した表を示します。
(注:これらのデータは、品種・生育条件(特に塩分ストレスなど)・乾燥重量/鮮度基準の違いがあるため、「目安」として扱ってください。)
抽出できた成分含有量例(レッドオラッシュ / Atriplex hortensis 葉 又は類似条件)
| 成分 | 条件・備考 | 含有量の例 | 単位 | 出典・備考 |
|---|---|---|---|---|
| β-カロテン | 非塩ストレス(0 mM NaCl)条件下、30日葉 | 0.132 ± 0.003 | mg/100 g DW(乾燥重基準) | NaClストレス影響の研究より (SciUp) |
| β-カロテン | 60 mM NaClストレス条件 | 0.260 ± 0.004 | mg/100 g DW | 上記同論文より (SciSpace) |
| アスコルビン酸(ビタミンC) | 非塩ストレス条件 | 5.950 ± 0.065 | mg/100 g DW | 同論文より (SciSpace) |
| アスコルビン酸 | 60 mM NaCl条件 | 23.573 ± 0.776 | mg/100 g DW | 同論文より (SciSpace) |
| チアミン(ビタミンB1) | 非ストレス条件 | 0.012 ± 0.0005 | mg/100 g DW | 同論文より (SciSpace) |
| チアミン | 60 mM NaCl条件 | 0.009 ± 0.0002 | mg/100 g DW | 同論文より (SciSpace) |
| リボフラビン(ビタミンB2) | 非ストレス条件 | 0.024 ± 0.0000 | mg/100 g DW | 同論文より (SciSpace) |
| リボフラビン | 60 mM NaCl条件 | 0.018 ± 0.0003 | mg/100 g DW | 同論文より (SciSpace) |
| 総フェノール量 | 畑および温室条件(播種時期影響) | 281.11 ~ 477.50 | mg GAE/100 g (乾燥葉基準) | 播種時期・環境による変動を示す研究より (Journal of Agroalimentary) |
| 鉄(Fe) | Ladakh(インド高地)での生育葉 | 100 mg/kg | = 10 mg/100 g | Rinchen & Singh による報告より (ResearchGate) |
解説と注意点
- 上記のビタミン類・カロテノイド類の測定は 乾燥重量(DW: dry weight, 乾物基準) で行われていることが多いです。生葉基準(fresh weight, 生重基準)に換算するには水分率を考慮する必要があります。
- 塩ストレス(NaCl 添加)条件下では、β-カロテンやアスコルビン酸は上昇する傾向が見られた、という報告があります。 (SciSpace)
- 総フェノール含量も播種日や栽培環境(温度・日照など)により大きく変動するという報告が複数あります。 (Journal of Agroalimentary)
- 鉄の値(10 mg/100 g)は、限られた地域試料に基づくものであり、他地域・他品種では変動が大きい可能性があります。
- 葉類野菜(特にビタミン C・ポリフェノール類など)は「測定条件(晴天・収穫時間・保存処理など)」によって大きく変わるため、同じ「レッドオラッシュ」という名前でも、実際の流通品ではこれらの値が異なる可能性が高いです。
- また、栄養面だけでなく、シュウ酸・サポニン・抗栄養因子(antinutrients)を含む可能性も指摘される文献もありますので、過剰摂取や調理法には注意が必要です(例:シュウ酸はほうれん草等同様に含む可能性)(Botanical-online)
レッドオラッシュ(Red Orach、学名:Atriplex hortensis)は、古くからヨーロッパや中東で栽培されてきたヒユ科(旧アカザ科)の葉菜で、**「レッドマウンテンスピナッチ(赤色の山ホウレンソウ)」**とも呼ばれます。美しい赤紫色の葉を持ち、サラダや炒め物などに利用される高機能野菜です。
以下に、レッドオラッシュの耐寒性について詳しく説明します。
● 耐寒性の基本評価
レッドオラッシュは中程度の耐寒性を持つ植物です。
一般的には**−3℃前後まで**の低温に耐えることができますが、
長期間の霜や凍結にはあまり強くありません。
- 発芽適温:15〜20℃
- 生育適温:15〜25℃
- 耐寒限界温度:おおよそ−2〜−3℃程度(短時間なら耐える)
● 越冬の可否
- 露地栽培では越冬が難しいとされています。
特に霜が多い地域では、葉が凍結して枯れることが多いです。 - ただし、**温暖地(冬期の最低気温が0℃前後)**では、
不織布やトンネル栽培で防寒すれば、冬越しできる個体もあります。 - ビニールハウスや簡易温室内であれば、冬期でも生育が可能です。
● 寒さへの反応
- 寒冷期に入ると、成長は緩やかになりますが、
軽い寒さに当たることで葉色がより鮮やかな赤紫色に発色することがあります。 - 強い霜や冷風にさらされると、葉が黒ずんだり、水分が抜けてしおれることがあります。
● 防寒管理のポイント
- **マルチング(敷き藁・バーク堆肥)**で根を保温する
- 不織布・ビニールトンネルで霜を防ぐ
- 冬期の水やりを控える(過湿は根を傷める)
- プランター栽培なら室内やハウスへ移動
● 耐寒性の比較(参考)
| 野菜名 | 耐寒性 | 耐寒限界温度(目安) |
|---|---|---|
| レッドオラッシュ | 中 | −2〜−3℃ |
| スイスチャード | やや強 | −3〜−5℃ |
| ケール | 強 | −8℃程度 |
| レタス | 弱 | 0℃前後 |
● まとめ
- レッドオラッシュは冷涼な気候を好むが、強い寒さには弱い
- 秋〜初冬までは露地でも栽培可能
- 冬越しを目指すならハウス栽培や防寒対策が必須
- 霜に当てすぎなければ、美しい色と風味を長く楽しめる


